会長挨拶

日本児童英語教育学会会長 泉 惠美子(関西学院大学)

 このたび,日本児童英語教育学会の会長に就任いたしました泉惠美子でございます。平素より,会員の皆さまには当学会の活動に多大なるご支援とご協力を賜り,深く感謝申し上げます。皆様の信頼に応えるべく,微力ながら精一杯務めたいと存じますので,何卒よろしくお願い申し上げます。
 本学会は,1980年の設立以来,幼児・児童を対象とする英語教育の質的向上を目指し,研究と実践の架け橋としての役割を果たしてまいりました。業種や校種を問わず幼児・児童英語に携わる多くの指導者や実践家,大学教員等の研究者,行政や管理職,教育に関わる企業など,様々な方が一堂に会する豊かな共同体でユニークな団体です。子どもの外国語習得や英語教育の目的,カリキュラム,指導法,評価,教材,ICT,教員,学習者など多くのテーマで講演やセミナー,研究会を開催したり,実践や研究を発表したり,課題解決のために議論をしたり,交流したりしながら,より良い英語教育の探究・発展のために活動を進めております。また,英語授業研究学会とも連携をして,小・中のスムーズな接続や児童生徒の発達,英語の習得などについても検討を行っております。
 21世紀も四半世紀を過ぎ,VUCAの時代,グローバル化の進展に伴い,子どもたちが国際共通語としての英語を通じて世界とつながる力を育むことは,これまで以上に重要となっております。また,異文化理解やコミュニケーション能力の育成は,未来を担う子どもたちにとって不可欠であり,私たちはその成長を支援する責務を担っていると考えております。さらに,ことばの教育は思考や人格の形成にとっても重要です。私自身,教育現場や研究活動を通じて,子どもたちの言語習得の可能性や,教育者の皆さまのたゆまぬ努力に深い感銘を受けてまいりました。子どもたちが小さな成功体験を積み重ね,自信を持って英語を使い,笑顔で世界の人々とコミュニケーションする姿は,教育に携わる者にとって何よりの喜びでございます。多様な文化や価値観を尊重し,子どもたちが自ら考え,表現し,対話できる力を育むことが,持続可能な未来を築く第一歩であると信じております。
 日本では,小学校高学年で外国語が必修となり,2024年度には学習者用デジタル教科書が配布され,一人一台端末を用いた個別最適な学びや協働的な学び,教育DXが進展するなど大きな教育改革が起こっております。一方,諸外国では早期英語教育や多言語教育が進められ,ICTの普及に伴い,ARやVR技術を活用した仮想空間での英会話練習,対話型AIやゲーム形式の学習アプリなど,楽しく学べる環境も提供されていたり,CLILが導入されたり,教員の研修や資格の広がりや教材の開発が進むと同時に,地域間格差といった課題も広まっております。
 さて,この先の学会の在り方を考えますと,研究と実践が密接に結びついた学術コミュニティの形成,国内外の知見を積極的に取り入れたグローバルな視点を持つ研究の推進,教育政策や社会への積極的な提言を通じた,児童英語教育の発展への貢献,教員や研究者のネットワークの拡大を図り,持続可能な学びの場を提供することなどを進められればと思います。そのためには,指導者や子どもたちの声を尊重しつつ,研究成果を大会や『研究紀要』,Newsletterなどで広く共有し,実践的な知見を深める機会を引き続き提供する必要があります。若手研究者や教育現場の先生方が積極的に意見交換を行い,共に学び合う場を創出することで,英語教育の質を一層高めていきたいと考えております。5支部の枠を超えた研究部会やプロジェクト・チームなどを広く立ち上げていただき,会員一人ひとりが主役になって楽しく活動を行い,ともに成長できる学会づくりを目ざせればと願っております。そして,歴史と伝統ある本学会が日本の英語教育のさらなる発展に貢献できるものと確信しております。お知り合いの方にもお声掛けいただき,1人でも多くの方にご参加いただければ幸いです。
 皆さまのご健勝とご多幸をお祈り申し上げますとともに,今後とも変わらぬご支援とご協力を賜りますよう,心よりお願い申し上げます。